ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「あら?これ?」

琴羽さんが手に取ったのはススで汚れ、ガラスにひびが入った写真立てだ。

「あぁ、その写真の方がさっきお話しした、私を助けてくれて医師への道に導いてくださった先生です。
その写真、私の一番の宝物なんです」

「…」

琴羽さんが写真を凝視している。
なんだか、様子が変。

「もしかして、先生をご存じなんですか?」

「…知ってる」

琴羽さんは、力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。

「琴羽ちゃん?どうしたの?」

様子がおかしいことに気づいた孝弘さんが、琴羽さんの手にした写真を覗き込んだ。

「マナ…?これ…?」

「私の恩人の先生。私、その写真の先生のような医師になりたくて頑張っているの。いつか再会したら、胸を張って『先生を目指して頑張ってきた』って報告したくて」

あれ?孝弘さんまで。口元を手で覆い、ひどく驚いている。孝弘さんも知っているのかな?

「…っつ…」

え、うそ。琴羽さん泣いてる?
写真を凝視したまま、泣いていた。あの、無表情で機械のようにてきぱきと仕事をこなす琴羽さんが。
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