ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「驚かせたね、マナ。君の恩人だというこの写真の女医さん、一条まこと先生だね?琴羽ちゃんのお母さんだよ」
「え…」

真っ先に落ち着きを取り戻した孝弘さんの説明を聞いて、今度は私が驚く番。

「苗字は知らない。いつも『まこと先生』って呼んでた。まこと先生が琴羽さんのお母さん?」
「あぁ。琴羽ちゃんの『琴』は、まことさんの『こと』。羽は、お父さんが『翔太』だから。名前の一部に『羽』が入ってるだろ?」
「本当だ。あ、でも、琴羽さんのお母さんって、琴羽さんが十八歳の時に亡くなったって…」
「…そうだよ」

まさか。
先生が……まこと先生がもうこの世にいない?

思いもしなかった。
いつかお会いして、頑張った自分を見せたいってずっと思って、それをモチベーションにしてたのに。

目の前が真っ暗になった。今まで、ずっと追っていたまこと先生の背中が、急にひどく遠ざかり、空へと消えていくような錯覚さえ覚えた。



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