ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
翌日。
医師として仕事を始めると、まこと先生が亡くなっていた事実は思っていた以上のダメージだった。

ふとした時に先生を思う。もう、どれほど探しても会えない事実に愕然としてしまう。
気を取り直して無理をすれば、手の火傷が傷む。
痛みを我慢してまで頑張る理由は何だったんだろうなんて、仕事の最中にぼんやりしてしまう。



「二葉!お前、さっきから何してる!集中しろ!」
「すいません!」


いつも笑顔で飄々としている長野先生を本気で怒らせてしまった。

「疲れてるんじゃないか?少し頭冷やしてこい」
「すいません」

いつもなら、大丈夫と無理をするところだけれど、今日は本当にダメだ。外の空気を吸おうと素直に外に出た。




中庭のベンチに腰掛けて空を見上げる。黒く厚い雲に覆われ、今にも降り出しそう。
冷たい空気が頬を刺す。ぼんやりとした頭には刺激になった。

ーー先生。まこと先生。
私はどうしたらいいのでしょう。
『たとえ困難な状況に置かれても、いつでも前向きに』
今までは前を向いていれば、先生の背中が見えていた。いつか、医師になった姿を先生に見てもらいたい。その思いがあれば、どこまでも頑張れた。
それなのに、もう二度と会えないなんて。
先生の背中は、幻になってしまった。


いかに私にとって、先生の存在が大きかったか、痛感する。
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