ツイてない！！〜But,I'm lucky to have you〜

孝弘のリベンジ

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「孝弘、資料は？」
「あぁ、これ」

花音の執務室で仕事をしながら、僕はふと窓の外を見た。

「降りそうだな」
「雨？それとも雪？」
「さぁ、どうだろう。かなり寒くなってるから雪もあるかも。車のタイヤ、交換してあるよね？」
「琴羽のことだからたぶん…あら？」

最初に気づいたのは花音だった。僕は何だろうと花音の視線の先を見て、マナの姿に気づいた。
白衣姿で中庭のベンチに座り、空を仰いでいる。


「おばさまが、二葉先生の尊敬して憧れていた医師だったなんて。運命って時々こちらの想像を超えたいたずらを仕掛けるわね」
「…そうだな」



マナが浮かべるあの表情を、僕は見たことがあった。
涙があふれださないように、瞳を大きく見開いて空を見上げて。見つめる曇天は今にも降り出しそうなほど、黒い雲に覆われていて。

僕は、スーツの胸ポケットからスマホを取り出した。写真フォルダーの中から、特別な一枚を開く。高校の制服を着た琴羽ちゃんが、涙をこらえた写真。
今のマナの表情は、琴羽ちゃんがお母さんの葬儀の時に見せた表情にそっくりだ。