ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜

暖かい時期には花が咲き乱れる中庭は、葉を落とした裸の枝が寒さに震えるようだった。
そんな寒々しい中庭の中心に、立派な常緑樹だけが青々と頼もしげにそびえ立つ。クリスマスツリーになりそうな大樹だ。よく見ればイルミネーションの電球がぶら下がっている。夜になれば、光がともるのかもしれない。
ただ、今は曇り空で日差しもなく、寒さのために人影はない。
その大樹のそばのベンチに、マナはいた。

「マナ」

声をかけると、マナはゆっくりとこちらを向いた。僕の姿に驚いている。

「仕事中でしょう?どうしたの?」

「それはこっちのセリフ。マナこそ、どうしたの」

「いっぱいミスしちゃって。頭冷やしてるとこ。なんだか、足元がおぼつかないというか、どうしたらいいかわからなくって。いくら前を見ようと思っても、そこに何も見いだせない。
ずっと先生の背中を思ってきたから」

あぁ、今のマナはあの時の琴羽ちゃんと同じ。喪失感に苛まれて、進むべき道が見えなくなっている。
あの時、僕は、ただ黙って見守ることを選んだ。琴羽ちゃんが僕に助けを求めてくれるのを待っていた。
だけど。
今は違う。僕は、マナのそばでマナを支えたい。いつもの笑顔を思い出せるまで励まして、手を引いて歩きたい。

「いるよ」

「え?」

「琴羽ちゃんのママは、いるよ。今までもずっとマナの中にいたんだろ?変わらない。マナが理想とする姿そのままに今もいるよ」

マナは小さく笑って、そうね、と答えた。まだその目にいつもの明るい光が戻っていない。

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