ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「先に、寝る」


私は会話をシャットアウトして、寝室にこもった。しばらくドアの向こうで私の名前を呼ぶ声がしていたけれど、お布団をかぶって無視する。

頭の中を琴羽さんの姿が横切る。
わかってる。あの人には、敵わない。
孝弘さんから、あの人の姿を消すことも出来ない。
これからもずっとこんなに胸をモヤモヤさせたままなんて、耐えられない。


ハワイで生まれた私の初恋は、別れたあの日で止まっていると思っていた。だけど、まるで春を待つ花の蕾のように、知らないうちに育っていた。

孝弘さんにとって琴羽さんが特別な存在だと知って、これほどまでに嫉妬するなんて。
私、いつのまにか彼がこんなに好きだったんだ。


先生、私、恋は諦める。努力しても琴羽さんを越えられない。嫉妬で前を向いていられない。
前を向いて私らしくいられないくらいなら、諦める。

やっぱり、今まで通り私は仕事に生きる。恋愛に費やす時間なんて、私には要らない。


別れが頭を掠める。


いつも、琴羽さんばかりを追いかける孝弘さんとは、もう、一緒にいたいと思えなくなっていた。

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