ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
その時だった。


「真菜ちゃーん?」


誰?なれなれしく私を呼ぶのは?


「あ、みーっけ」


私にずかずかと歩み寄ってきたのは、黒いスーツを着た背の高い男性。髪はオールバックでかっちり固め、眼鏡をかけている。マスク姿のため顔がよく見えない。ただ、威圧感がハンパない。


「お、真菜ちゃんの白衣姿!いいねぇ」


顔は見えないけど、この声。聞き覚えがある。

私は周囲をうかがった。医局には長野先生と研修医。それに女性看護師が数名。みんな何ごとかと、こっちを見てる。

「勝手に入ってきたら困ります、た…」
大河さん、と言いかけて言葉を飲み込む。ここでその名前を言ったら、勘のいいひとは気づくかもしれない。
彼が人気俳優の久我大河だと。

「探してたんだよ、真菜ちゃん。ちょっと、いい?」

嫌だと言える状況じゃないよね。とっととどこかにこの人を連れ出さなきゃ。

「…こちらへどうぞ」


ちょうど、患者に病状を説明するための部屋が空いていた。小さな部屋だけどほかの人に話を聞かれないためには都合がいい。

私は彼をその部屋に連れ込むとドアを閉めた。


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