ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「長野先生、あなたに勝ち目はないよ。花音も琴羽もこいつの味方だ。一条家を敵に回すのは得策じゃないことくらい、分かるっしょ。
それに、こいつ“アリオンの丹下”の御曹司だよ。会社は継いでないけどさ、財力だけでなく人脈も最強」

「…へぇ」

大河さんが援護射撃でさらに孝弘さんを大きく見せようとしてる。一条の名前とアリオンの名前が出ただけで、長野先生には孝弘さんの後ろについている力の大きさが分かったようだ。

「大河、余計なこと言うなよ」

だけど、孝弘さんさんは険しい顔つきで大河さんを止めた。

「すこしでも強い鎧を身に纏えよ。相手は毎日顔を合わせてる先輩医師だぞ?攻撃力の差はデカイ」

「それにしても、アリオンのことなんて持ち出すなよ。実家の力なんて要らない」

「カッコつけるな、孝弘。真菜ちゃんがどうしても欲しいんだろ?だったら、使えるものはたとえ親の威光だろうがなんだろうが使え。自分の武器にしろ」

大河さんは長野先生との対峙を面白がっているけれど、やっぱり孝弘さんの絶対的味方。
彼なりになんとか孝弘さんを助けたい、と思っているんだろう。


「虎の威を借る狐のような真似をして追い払ったところで、マナの心は掴めない。自分の力だけで勝負して、マナに選ばれたい。マナの側にいられる男になりたいから。
心配してくれてありがとう。でも僕は大丈夫だから」

そう言って私を見た孝弘さん。
胸が大きくドクンと跳ねた。
芯が一つスッと通っていて、自分というものをしっかり持っていて、大河さんのお節介にもお礼が言える。
見た目だけじゃなく内面までカッコイイ。


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