ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「へぇ、引き際がきれいだ。大人の余裕って感じ?モテる男って、引き際のタイミングも上手いな。女の子のウケもいいし。見習おう。
さて、俺も花音のとこ戻る。じゃあな」

大河さんもいなくなり、ついに私は孝弘さんと二人きりになった。

「もっとゆっくり話をしたかったんだけど。ごめん。今は時間がない」

孝弘さんは腕時計をちらっと見た。そもそも大河さんを探しに来た時点で、次の仕事の予定が迫っていたはず。

「今日、帰ったら話をしよう」
「今夜は当直だから」
「わかった。じゃ、明日。
必ず帰ってきて。待ってるから」

願うように告げて、孝弘さんが私の肩に手を置いた。あぁ、いつの間にかまた幼さが戻ってきてる。私を見る瞳が、病気になって心弱くなって私にすがる子供の患者さんに似てる。
こんな瞳で見つめられて、放っておけるわけない。
わかっている。落ち着いて話をするべきだ。これからの二人のことを。







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