ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜


当直が終わる。
着替えを終えて病院を出ようとした私を、孝弘さんは通用口で待っていた。

「お疲れ様、マナ」
「孝弘さん?お仕事は?」
「花音は今日の午後は休み。たまには大河と二人きりで出かけるってさ」

私は素直に孝弘さんの運転する車に乗った。
わずか10分ほどの距離。私はなんと切り出すか悩んでいるうちに車はマンションに着く。


考えれば考えるほどぐちゃぐちゃ。
もう、これはハッキリさせてスッキリしよう。

「皆さんが口々に言っていた孝弘さんのこじらせていた初恋の相手って、琴羽さんなんでしょ?」

マンションの部屋に入るなり、私は孝弘さんにズバリ尋ねた。


「うん。小さいころからずっと琴羽ちゃんを追いかけてばかりいたから。あの人の背中を追いかけることが僕の生きる道標だった。
でも、僕の中で琴羽ちゃんのことはもう終わったこと。マナに出会えて完全に吹っ切った」

「そんなに簡単に吹っ切れるもの?」

「それだけマナとの出会いは衝撃だった。もっとずっと一緒にいたいよ。僕のことをたくさん知ってほしい。マナのことも知りたい。
琴羽ちゃんは、僕の初恋の人。その事実は変わらない。でも、もう過去のこと。
マナが琴羽ちゃんのママ…まこと先生を尊敬して目標としている姿が、僕が琴羽ちゃんを尊敬して憧れているのと重なって見えた。
僕たち似てるなって思って一層好きになった。
でも、それがどうしても許せないなら、僕も変わる。好きなのはマナだけ。欲しいのもマナだけ」


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