ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
孝弘さんの顔。ちょっと泣きそうなゆがんだ表情に、あどけなさを感じる。そんな顔で見つめないで。助けてあげたくなる。大丈夫だよって抱きしめてあげたくなる。
でも。

「…うれしいけれど。
私は恋愛に向いてない。これからも人生を仕事に捧げて生きていきたいの。女性としてはつまらない人生かもしれないけど、もう、迷わない。まこと先生が叶えたかった夢を追いかける為に生きてく。だから、孝弘さんも無理しないで。
孝弘さんのことを考えて、あなたに捧げる時間は…」
「そんなの、当たり前だよ!」

時間はないといいかけたのに、孝弘さんが被せるように言った。

「僕だって同じ。目指す夢はマナと同じ。
恋愛に向いてない?僕の気持ちは疑う心配要らない。悩まないでよ。いつでもマナを愛してるから。疲れた時、辛い時、いつでも寄りかかって欲しい。頼りにしてもらえるように、僕も頑張るから。ただ、そばにいたい。それだけで、僕はどこまでも強くなれるから」

あ、似てる。大河さんが言ってたことと似てる。ただそばにいて必要としてくれるだけでいいと。必要な時にいつでもこの手を差し伸べられるところにいたいと。


うん。
それで、いいのかもしれないね。
誰より近くで支え合っていられる存在があれば、お互いもっと成長できるかもしれない。

「…いいの?孝弘さん、私、琴羽さんのようにはできない」

「琴羽ちゃんは、琴羽ちゃん。マナはマナ。
いいも悪いも、比べるなんておかしいよ」


そうか。
琴羽さんに勝てないなんて、間違いだった。
そもそも、琴羽さんと争うべき問題じゃない。
私は私。孝弘さんはそれでいいと言ってくれた。


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