ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
その人は、狭い座席で長い足を窮屈そうに組み、タブレット端末をジッと見ていた。
周囲のざわつきも、隣のカップルの高いテンションでのイチャイチャぶりも、気に留める様子もない。

彼の周りだけ、まるで風が凪いだように空気が静かだ。落ち着き払ったその様子がちょっと不思議。
お姉さん家族と一緒だったからバカンスかと思ったけど、もしかしたら仕事なのかな。

っていけない、四辻さん家族は一足先に降りたこと知らせなきゃ。

「あの、四辻さんご家族は先に降りられましたよ。そのまま病院に直行だと思います」

私が話しかけると、彼はタブレットからゆっくりと視線を私に向ける。その時初めて彼の顔をハッキリと見た。


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