ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
肩をすくめて笑う丹下さん。その表情は、わずかにあどけなさをにじませている。
大人の男性らしい落ち着きのなか、たまに見せる可愛らしい様子にくすぐられてしまう。

「それにしても8歳までだなんて、ハッキリ覚えてるんですね。小学2年生か3年生くらいでしょう?」

その質問をしたとたん、丹下さんの表情が陰り、視線がテーブルに落ちた。

あ。
まずい。聞いちゃいけないことだったのかも。

「僕には親同士もすごく仲が良い、同い年の幼なじみが二人いるんだ。
そのうちの一人がハワイに別荘を持っていて、夏休みになると、みんなでそこに集まってた。
姉と僕。その別荘持ってる家のヤツは一人っ子だから、姉代わりの親戚のお姉さん。もう一人の幼なじみとその弟。
子供六人でよく遊んだよ。懐かしいな」

丹下さんは、海のほうを見つめている。幼い頃の思い出を辿っているのだろうか。
それにしても、ハワイに別荘持ってる幼なじみって…お金持ちだなぁ。

「その親戚のお姉さんが、僕より10歳歳上でみんなをまとめてくれていた。
僕が8歳、お姉さんが18歳の時にお姉さんのお母さんが急死して、お姉さんは変わってしまった。
もう、僕たちと遊んで、笑い転げていたお姉さんじゃなくなってしまって。
それ以来、毎年恒例だったハワイ旅行は、なくなった」



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