ツイてない!!〜But,I'm lucky to have you〜
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったわね。
私は四辻初音(よつじはつね)。ピアニストなの。夫は私のマネージャー兼個人事務所の代表をしているわ」
「四辻涼(よつじりょう)です。改めてどうぞ、よろしく」

ピアニスト四辻初音?
ちょっと待って。その名前よく知ってる。

「…あの、四辻さん以前、光英大学附属横浜新医療センターでチャリティーコンサートされませんでしたか?」
「した!私、毎年、病院でチャリティーコンサートをするのをライフワークにしてるから。横浜はいつだったかしら」

思い出せない様子の初音さんに、涼さんがすかさず答えた。

「四年前だね。奏を妊娠中だったから」

「私、研修医だったんです。あの時実際に演奏しているところは見れなかったのですが、院内のスピーカーからピアノの音が流れてきて。ちょうど流行っていたアニメの音楽に、子供たちが大喜びだったんです!すぐにCDを買いました。今でも、小児科でイベントがあるときに流してるんですよ!」

私は、職場の机の引き出しにしまってあるCDのジャケットを思い出していた。

「ぜひ生演奏を聴きたくて、何度かコンサートのチケットも申し込もうとしました。だけど大人気で即日完売。一度も買えませんでした。
嘘みたい。ポスターでお顔を何度も見てたのに、何で気づかなかったんだろう。
お会いできて光栄です」

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