Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜
「あっ、あの人って前の舞台で主役をしていた人だ!」

エヴァンが目を輝かせる。有名な舞台俳優や女優、さらには有名脚本家までもが劇場の中に入って行く。フィオナは有名人ばかりが入っていく劇場をボウッと見ているエヴァンの手を取った。

「行きましょう、遅刻しちゃう」

劇場の中に一歩二人が足を踏み入れれば、そこには華やかな舞台が作られるまでの大きな裏側の世界があった。俳優たちが台本の読み合わせをし、衣装係が衣装制作に取り組み、脚本家が台本のおかしな部分がないかチェックをしている。

フィオナの頭には、昔家族と舞台を見に行った時のことが浮かんでいた。フィオナや弟妹たちが大好きだった童話が舞台化されることになり、フィオナが両親に頼んで連れて行ってもらったのだ。幼い頃だったが、あの時の光景をずっとフィオナは覚えている。

徹底的に役を演じる役者たち、スポットライトに照らされた舞台、本の世界とは違う目の前で起こる物語に、フィオナの心は揺さぶられていた。

(あの頃はまだ笑えていたわ……)
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