Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜
フィオナがぼんやりとそんなことを考えていると、トントンと軽く肩を叩かれる。フィオナが後ろを振り向けば、黒い髪に青い瞳を持った男性が微笑みながら立っていた。

「君たち、今日からこの劇団に入る人だよね?僕もなんだ!よろしくね」

男性はキキョウ・ミヤノと名乗り、衣装係として採用されたことを話した。キキョウの瞳はずっと輝きを持っていて、エヴァンが「どうしてそんなにニコニコしてるんですか?」と訊ねると、キキョウは「あれ?顔に出てた」と恥ずかしそうにしながらも理由を教えてくれた。

「実は僕、幼い頃からこの劇団の舞台を見るのが好きだったんだ。だから、こうしてこの劇団の一員になれて嬉しいんだよ。本当は前の団長の元で働きたかったんだけど……」

「今は団長が違うんですか?」

フィオナが訊ねると、キキョウはコクリと頷く。そして一枚の写真を取り出した。幼いキキョウとスーツを着た優しそうな男性が笑顔で写っている。

「この人が一年前までこの劇団の団長だったんだ。でも、事故で亡くなってしまって……。この人の弟さんがここの団長になったんだけど、金に汚いって噂があってね。前の団長は優しくて貧しい人に寄付もしていた人だったから……」
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