Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜

潜入捜査が始まって一ヶ月半。怪しい人物は何人も現れ、そのたびにフィオナたちが捜査をしていくのだが未だに黒の人間はいない。

「フィオナ、私とフリージアが接触したんだけど犯人じゃなかったわ」

レティシアから電話を受け、フィオナは「そうですか、申し訳ありません」と謝る。今のところ行方不明事件は起きていない。しかし、犯人が見つかっていないということはまたいつ事件が起きる可能性があるということなのだ。

「フィオナ、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ？」

「落ち込んではいません」

優しく寄り添うようにレティシアに言われ、フィオナは首を横に振る。早く最悪の事態を食い止めたい。だからこそ、落ち込んではいられないのだ。

「フィオナは頑張りすぎるほど頑張るから、ちょっと心配だな。潜入捜査だからちゃんと劇団の仕事もしなくちゃいけないんだし……」

レイモンドが言い、「問題ありません」とフィオナは返す。オンラインとはいえ大学の授業を受け、ミステリー小説を執筆し、こうして特殊捜査を掛け持ちできているのだ。うまくこなせる自信があった。