Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜
舞台の裏側を作るというのは、思っているよりも大変な仕事だ。小さな小道具一つにさえ手を抜くことは許されない。だからこそ、見に来てくれたお客さんに最高の物語を届けられる、そうレイチェルが言っていた。

「私たちの仕事は、お客様に感動を届けるお手伝いをすることだと教わりました」

レイチェルはこの仕事に誇りを持ち、心を込めて小道具を作っている。しかし、時折見せる悲しい目にフィオナとエヴァンは疑問と疑いを抱いているのだ。

「まあ、君がうまく仕事ができているようで安心したよ。君は覚えがいいとレイチェルや他の小道具係も言っていたからね」

「ありがとうございます」

フィオナがお礼を言うと、ザクロはニコニコと笑いながら手を差し出す。意味がわからずフィオナが「ザクロさん?」と訊ねると、ザクロの口からとんでもない言葉が飛び出す。

「お金くれない?今月、みんなのお給料のやりくりで苦しくってさ」

この時、フィオナはレイチェルが言っていた言葉を思い出す。団長がお金をほしがったら抵抗せずに渡すこと、そう言っていた。
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