Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜
「……私に優しくしてくださるのは、特殊捜査チームの皆さんだけです。こんな私に優しさなど、不必要だというのに……」

優しくされても、それを返すことはできない。無表情で無感情。ただ黙々と機械的にしか動けない。こんなフィオナに優しくしてくれる人など、今まではエヴァン以外存在しなかった。

フィオナがスカートを握り締めながら俯くと、ふわりと頭に手を置かれる。その手はゆっくりと動き、フィオナの荒れそうになる心を落ち着かせていく。俯くフィオナにシオンは言った。

「あなたが不必要な存在だと言うのなら、私は最初からあなたに声をかけてなどいない。あなたは選ばれた。だから胸を張りなさい。感情がないとか、無表情とか、そんなことで私やサルビアたちはフィオナを突き放すようなことはしない」

行きましょう、とシオンに手を取られてフィオナは森の中を再び歩いていく。シオンはフィオナが歩きやすい道を選んで進んでくれた。そんな気遣いにフィオナはすぐに気が付き、口からスルリと「ありがとうございます」という言葉が出る。
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