Tear Flowers〜囚われた先にあるもの〜
無愛想にガクは言い、フィオナとシオンも自己紹介をする。ガクはピクリとも表情を動かすことなく、「こちらへどうぞ」と応接室へと案内し始めた。

シオンの表情をフィオナがチラリと見ると、執事でここまで愛想のない人はいるのかという驚きと戸惑いを見せていた。誰でもそう思うだろうとフィオナは屋敷に目を向ける。

赤いカーペットが敷かれた廊下は、天井にはシャンデリアがあり、壁には絵画がかけられ、高価そうな調度品も置かれているのだが、生活音が全くせずまるで人が誰もいないかのようだ。

「このお屋敷で雇われているのはガクさんだけなのですか?」

フィオナが訊ねると、ガクは無表情なまま「ええ」と返す。一人でこの屋敷のことを全てするのは大変だろう。

「こちらが応接室になります。当主様がお待ちです」

「ありがとうございます」

淡々とガクは言い、くるりと背を向けて歩いていく。シオンとフィオナは顔を一瞬見合わせた後、シオンが応接室のドアをノックした。

「どうぞ」
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