リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
 門から裏手へ回ると、あの深い森が私を迎える。
 人は変わっても、ここだけはあの頃のまま。 鬱蒼とした木々が風を運び、髪が顔に纏わりつく。
 手で髪を押さえて森の奥へと進んで行くと、以前は聞こえた馬の蹄の音や嘶きは聞こえて来ない。

 私の身体をまだ取り戻したとはいえない体力でも、森を散歩するくらいの元気はついてきた気がする。
 実家のホワイト家に居たままではロージーに甘えてばかりだっただろうが、こうして一人になる機会が増えた今は動かざる状況を作れて逆に良かったと思える。
 侍女や使用人達が構わずに放っておいてくれるからというのもあるが。
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