リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
×月×日

 森の奥にある木々の開けた池近くまで近づいて行くと、どこからか声がする。

「ねぇ、君。 水を汲んで来てくれないか?」

 私が声のした辺りを見回していると、さらに声がする。

「どこを見ているのさ? ここだよ」

 それはたくさんある木々の一つで、声を発していなければ気づかないくらいに回りの緑と同化した、貴族の紳士とは思えない身なりと言葉遣い。

 その人物はどうやら水を汲んで来てほしいと私に頼んでいるらしい。

「水なら池がそこにありますわ」

 ごく当たり前の、当然の事を言ったつもりだ。
 ところが、彼は私の言葉を蔑むように一蹴した。

「これが見えないのかい?」
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