リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
木の根元に座り込んで、両手で水を掬うようにしている。
近づいてその両手を見てみると、そこには産まれて間もないらしい子犬。
人間に捕まえられた子犬はか細い小さな鳴き声で親犬に助けを求めているが、それらしき犬は見当たらない。
貴族でもない人間が森とはいえ、ふらふらと立ち入るのは許されていない。 この森はシモンズ家の所有する敷地だ。 まさか、たまたま近くを通り掛かって子犬を見つけたとでも言うのだろうか。
どちらにしても、とても紳士な振る舞いではない。
私の非難する目線に気づいた彼は弁解や言い訳でもなく、言う。
「自己紹介しないと不審者にされそうだな」
「違うのですか?」
「君はロナウドの婚約者だろ? 俺は彼の友人でジェイと言うんだ。 俺の邸はこの森の反対側にあってね、ここを抜けた方が早くロナウドの邸に寄れるから」
ずいぶんと親しげに話す人物のようだ。 私の方はまだ名を名乗ってもいないというのに。
近づいてその両手を見てみると、そこには産まれて間もないらしい子犬。
人間に捕まえられた子犬はか細い小さな鳴き声で親犬に助けを求めているが、それらしき犬は見当たらない。
貴族でもない人間が森とはいえ、ふらふらと立ち入るのは許されていない。 この森はシモンズ家の所有する敷地だ。 まさか、たまたま近くを通り掛かって子犬を見つけたとでも言うのだろうか。
どちらにしても、とても紳士な振る舞いではない。
私の非難する目線に気づいた彼は弁解や言い訳でもなく、言う。
「自己紹介しないと不審者にされそうだな」
「違うのですか?」
「君はロナウドの婚約者だろ? 俺は彼の友人でジェイと言うんだ。 俺の邸はこの森の反対側にあってね、ここを抜けた方が早くロナウドの邸に寄れるから」
ずいぶんと親しげに話す人物のようだ。 私の方はまだ名を名乗ってもいないというのに。