リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
「ねぇ、この子の名前をつけてくれる?」

「え、私が?」

「俺だと酷くつまらない名前になりそうだからさ」

 つまらない名前とはどのような、と聞くのは遠慮した。
 犬らしい名前や可愛いらしい名前など思いつきそうな顔をしていない。 きっと頭に浮かんだ適当なものを言いそう。 そしておそらく本当にそうなのだろうと想像できるからだ。

「この子は女の子のようだし、それなら君の方が可愛い名前が浮かびそうだ」

 名付け親というほどのものではないが、そうする事で責任の一端を感じられるのが嬉しくなった。 彼がそんな私の心情を勘繰ったのでないとしても。

「そうですね……何が良いかしら」

 手を顎にやって考える素振りをしていると、彼がいきなり慌てた声を出した。

「あ!」

「どうなさったのですか?」

「こいつ、お転婆な女の子だな……」

 見ると、彼の粗末なシャツは濡れていた。
 どうやら、お腹いっぱいで寝ていた子犬がそのまま粗相をしてしまったらしい。

「まぁ!」

「今日のところは帰るよ。 ロナウドには来た事だけ言っておいてくれ」

そう言って、子犬を抱いたまま立ち上がった。
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