リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
「ミハイゼン王国にはリリィ嬢という、それはとても美しい女性がいるらしいのだが、残念な事に彼女は目の前の男よりビアンカ姫に夢中らしい」

「その女性はきっとハンカチで目隠しされていますのね」

「おや、その女性は男の魅力に気づく可能性はあるという事かな?」

「婚約者のいる女性を口説くなんて立派な殿方とは言えませんわね」

 軽口が叩けるくらいの親しさになったのは、私の体調にも影響を及ぼしている。
 医師にも、もう昏睡の影響は無く、体力をつけるのみだと後押しされた。

「今日もロナウドは王宮かい?」

「えぇ、大事なお仕事ですもの」

「君を放ったらかしにしても構わない仕事なんてあるとは思えないが」

「そういえばロナウドが言ってました。 ジェイはトラウデンバーグのご出身ですからご存知でしょう?」

「なんの事だい?」

「トラウデンバーグの王子が体調不良で寝込んでいるらしいですわ」

「あの国の王子は情けないね。 確か、もうずいぶん国民に顔を見せていないはずだが」

「どこがお悪いのでしょうか?」

「さぁね、恋の病かもしれないよ?」

「本当は行方不明なのを隠しているのではないかといった噂もあるようですわ。 全くの元気で、寝込んでもいないと」

「あの王子は人前に出たがらない恥ずかしがりだと聞いたよ。 身体が弱いから寝込むのはいつもの事ではないのかな」

「ジェイは王子に会った事がおありですの?」

「いや、夜会でチラッと見掛けたくらいだね」

「王子が行方不明だなんて確かにありえない話ですわね」
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