リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
それが何なのか
×月×日

 刺繍をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。
 もちろん読書もそうだし、最近凝っているのはレース編みだ。

 それに庭の花壇の手入れ。
 基本的には庭師がするから私の手が土で汚れる事はない。 できる事といえば、咲いた花が虫で駄目にならないように目視するくらい。

 侍女や庭師からも手出しはするな、ときつく言われている。
 もし破って怪我でもしたら、二度と触らせてもらえない。
 それだけは嫌だ。 貴重な安らぎを無駄にしたくない。

 ロージーが邸に遊びに来た時は一緒に花を愛でながら心地良い風を感じたり、時には庭の芝の上に布を敷いて寝転んでみたり。
 その度に侍女から叱られるのは常で、もはや呆れて言葉も出なくなるようだ。

「来年の春にはきっと色んな花が咲き誇るようになるわ。 薔薇もアマリリスもね」

「私の好きな花、覚えていて下さったのですね、お姉様」

「もちろんよ。 それだけではなくて、どの花も綺麗だから好きなの。 心が踊るわ」

 頻繁にとはいかないが、ロージーはよく邸に顔を出す。 それはロナウドが仕事で留守の時でも。

 以前はビアンカに会いにジェイの邸へ足を運んだ私だったのに、最近はご無沙汰だ。
 元気にしているだろうか、ジェイもビアンカも。
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