リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
「どうかしたのかね、リリィ?」

「お父様に話があって」

「ロナウド君はどうした?」

「客室にて休んでいらっしゃるはずです」

「……はず?」

 私は書斎机の前にあるソファーに腰掛けた。

「何か温かい物でも持って来させよう」

「いえ、それには及びませんわ」

 お父様は書斎机で手を止め、私を見る。

「お父様、私とロナウドの婚約は既に解消なさっているのですね?」

「リリィ、それをどうして?」

 お父様は両手を机に乗せて腰を浮かせた。

「誰に聞いたのでもありません。 耳にしただけですから安心なさって下さい」

 こんな話をしようとしているのに、こんなにも穏やかな気持ちでいられるのが不思議だ。
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