リリィ・ホワイトの愛が目覚めるまでの日記
「リリィ様」

 ドアをノックして入って来たのは侍女。

「お話の方はどうなりましたか?」

「お父様が涙をこぼされるなんて初めてだったわ」

「リリィ様もロージー様も大切な存在ですから」

「えぇ、私も恨んでなんていないわ。 娘の気持ちを考えてくれたのだもの」

「では、お気持ちは変わらないのですね……」

「私がいては誰も幸せになれないでしょう?」

「私にとってはリリィ様にも幸せになって頂きたいのに」

「ありがとう、きっと前途多難でしょうね」

 鏡台の椅子に座っていると侍女が後方に立ち、ブラシで髪を解してくれた。 その手つきは静かで、そっと労るように。

 なのに鏡越しの侍女は悲しそうな表情だ。
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