お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
二週間なんてあっという間だ。
旅行前日の今日まで、航太郎さんは楽しそうにしていた。
いや、それでなくてもいつもにこにこしているけれど。
なんだかんだ言いつつ、沖縄は初めての私もちょっと楽しみにしているのが悔しい。
航太郎さんの言いなりになんてなりたくないのに、上手く丸め込まれてしまった。
だってあの人、超絶マイペースなんだもん!
人の話なんて聞きやしない!
自分では冷たくあしらってるつもりなのに、いつまでたってもめげないし、メンタル鋼ですか!
それとも私の威厳が足りないの?
なんてひとり悶々としていると、お風呂に入っていた航太郎さんがリビングダイニングに戻ってきた。
姉が失踪してからもう一ヶ月。
航太郎さんと暮らすのもだいぶ慣れた。
初めはお風呂の後上半身裸で平気でうろつく彼に毎日怒っていたっけ。
今となっては、引き締まった体躯をどれだけ見せつけられようと、ちょっと心臓が跳ねるだけだ。
まだ完全に動揺しないってのは、無理。
男の人の体を見る機会なんて、小さい頃お父さんと一緒にお風呂に入っていた頃だけだもの。
今日も今日とて上半身裸の航太郎さん。
私は立ち上がってキッチンの冷蔵庫を開けた。
「お水、飲みますか? それとも、お酒?」
「明日は大事な日だから、今日は水にしとくよ」
「別に、酔いつぶれて旅行キャンセルでも構いませんけどね」
冷えたペットボトルを取り出してコップに飲用水を注ぎながら憎まれ口をたたく。
半分冗談だけど、半分本心だ。
楽しみにしている自分が落ち着かなくて、つい可愛くないことを言ってしまう。
そんな私を航太郎さんは怒るどころか毎回、やんわり対応してくれる。
「またそういうことを。 本当は翠だって楽しみにしてるでしょ。 隠してるつもりかもしれないけど、沖縄のガイドブック買って読んでるの、知ってるよ」
「な、どうしてそれを――!」
「リビングのゴミ箱にレシートを捨てたのは、迂闊だったね。 ゴミ出しは俺の仕事だって、忘れてた?」
「うぅ……不覚…」
家事は基本分担制だ。
お昼はふたりとも会社なので各々、朝と夜の食事は私が作ってだいたい一緒にとり、後片付けは航太郎さんがやってくれる。
他にも、決まった日のゴミ出し、休みの日は洗濯や掃除もしてくれる。
たまに外食にも連れて行ってくれたりと、つくづくどこまでも完璧な人だ。