お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~

それからトロと遊んだり、お土産に持ってきてくださった有名店の洋菓子を三時のおやつに世間話に花を咲かせたりと過ごし、十七時頃に駅までお送りして別れた。
せっかくなら夕飯までいらしたらどうかと提案したものの、夜は夫婦でレストランを予約しているそうだ。
帰りの車の中、去り際のお母様の言葉を思い出す。

『翠さんは良いお母さんになりそうね。 孫が見られるのが楽しみだわ』

『こらこら、母さん。 子供は授かりものだから、急かすんじゃないよ』

悪気は一切感じなかったので、本当に楽しみにされているのだろう。
でも……

「翠。 母さんのさっきのは気にしなくていいからね」

「いえ……。 偽装結婚だなんて知らないんですから、当然のことです」

「偽装でもそうじゃなくても、我が親ながらデリカシーがないと思うけど」

航太郎さんは落ち着いた口調だ。

「でも、私の…ワガママなんですよね」

ぽつりと呟くと、航太郎さんが小首を傾げた。

「偽装結婚。 姉は帰ってくる気配ないし、このままでは良くないことは分かってる。 航太郎さん、籍、入れましょう。もしもまだ、航太郎さんが良いと言ってくれるなら、私と結婚してください」
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