お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「社内ではイケメンでクールなハイスペ男子だと持て囃される先輩がにやけるような奥さんて、どんな方なんですか?」

瀬口に言われてどきりとする。
俺、にやけてたか?
眉間に皺を寄せていると、何を勘違いしたのか瀬口が慌てて補足した。

「奥さんを寝取ろうとか、そんな恐ろしいことは考えていないので! 絶対ムリですから、三間先輩に落ちた人を俺に振り向かせるなんて」

あいにく、翠はまだ俺に落ちていないが。
いずれ近いうちに落とすつもりだ、否定はしないでおく。

「俺の妻がどんな人かと聞いたな。 妻はとても可愛いよ。最近子猫を飼い始めたんだが、妻と猫がじゃれあっている姿なんて、愛おしくて堪らない」

昨日帰宅した時のことを思い出し、頭を抱える。

『トロく〜ん。 航太郎さん、遅いですねぇ。お腹すいたから、早く帰ってきてほしいね。 トロもそう思う?』

リビングルームに続くドアから、裏声でトロに話しかける翠の声が聞こえてきて、しばらくドアを開けられなかった。
お腹を空かせているのに、俺の帰りを待ってくれていたのと、猫にデレデレする翠は、可愛い以外のなにものでもないと思った。

「へぇ。 先輩、口元がだらしないですよ。いいなぁ、奥さん幸せだろうなー、こんなに愛されてて」

瀬口が俺の隣を歩きながら項垂れる。
ことある事に結婚したいと呟く瀬口はしんみりとした口調で言う。

「どうだろう。 俺の愛情表現に照れてはくれるけど、それは単に男慣れしていないからだろうし」

思わず、常に不安に思っていることをこぼすと、瀬口は意外だと言うように目を丸くした。

「先輩でも悩むことあるんですね。 そういうの、手馴れてそうだし、余裕な顔でいろいろしてるんだと思ってました」

意味深な発言をしながら、いたって真面目な顔の瀬口。
俺は訝しげに眉をひそめた。
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