お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「瀬口は俺をなんだと思っているのか知らないが、なにも女性慣れしているわけではないよ。そんなに遊んだ記憶はない」

「あー、確かに先輩、不器用そうですもんね」

瀬口は妙に納得してみせるが、俺が不器用そう?
むしろ逆を言われることの方が多かったから若干困惑する。

「言葉より態度で表すタイプじゃないですか? 好きとか愛してるとか、言わなさそう」

なんだ、恋に不器用ということか。
しかも瀬口のやつ、図星をついてきた。
確かに俺は態度で示そうとする。
キスとかハグとか、イコール好きだと分かってもらえるだろうと。
違うのか?

「今までの彼女にはそれで伝わっていたかもしれないけど、奥さんはそうじゃないって可能性、ありますよねー」

「そうじゃないって、どういうことだ」

「鈍いなぁ、もう! ちゃんと言葉で言ってあげるんですよ。 先輩の一途な愛を!」

「言葉で……? なるほど、それは思いつかなかったな。ありがとう、瀬口」

頼りになるな、瀬口。
伊達に合コンやりまくってるわけじゃなさそうだ。
心からの感謝とともに口角を持ち上げる。
すると、瀬口は乙女のように口元に手をやり、悲鳴をあげた。

「三間先輩が、笑った…!? 結婚したって聞いてから、なんとなく物腰が柔らかくなったなーとは思ってたけど、ここまでとは……」

だからおまえは、俺をなんだと思ってるんだよ。
俺はそんな瀬口を無視して、落としていたペースを上げて歩く。
早く帰らなければならない用事ができたからな。
一刻も早く、翠に好きだと伝えたい。




そうして、瀬口考案の俺の作戦は有効だった。動揺してヤケドをしてしまうくらい、俺の事を意識してくれたみたいだ。
逆に言うと、今までの愛情表現は全く伝わっていなかったということだ。
改めて、気づかせてくれた瀬口には感謝しかない。
今度、飲みに誘おう。


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