お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「えっ、やった、先輩からのお誘い、嬉しいっす!」
「そ、そうか。 じゃあ、仕事が終わり次第行こうか」
「はい! 目にも止まらぬ早さで終わらせてみせますよ!」
いつにもなくやる気を見せる瀬口は、昼休憩の時間が終わる前にデスクに戻っていった。
後輩が慕ってくれるのは、純粋に嬉しい。
お礼をしたいのは俺のほうなのに、これだけ喜んでもらえると誘ってよかったと思える。
俺は翠に、後輩と飲むので夕飯はいらないとメッセージを送信し、瀬口に倣って仕事に戻ることにした。
「俺、三間先輩に憧れてるんですよ…」
瀬口の前にはすでに、ジョッキが三本並んでいる。
酔いが回るのが早かったようで、彼は顔を真っ赤にさせながら話し出した。
「営業の部長任されて、俺が入った頃にはエリート中のエリートの先輩見て…俺もこんなふうになりたいって思ってました。 なんでもできるし、頼りになるし、カッコイイし、女の子にモテるし……かっこいいし…」
後半の台詞は聞かないことにして、枝豆を口に運ぶ。
「買い被りすぎ。 瀬口だって、ハードなスケジュールにもかかわらずこなして、俺のサポートもよくやってくれてる。 俺は周りの人間に支えられて、やっていけてるんだよ」
「せんぱい……すてき……。 これはモテるわけだ…」
ぼそぼそと口にしてから、まだ飲もうとする瀬口を引き止める。
「飲み過ぎなんじゃないか?」
「俺が潰れたらー、先輩家まで運んでください」
世話のやける後輩だ。
へらりと笑ってみせる瀬口に苦笑して、俺ももう少し飲むことにした。