お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
翌朝、俺は段々と明るくなる窓の外の朝日で目を覚ました。
規則正しい寝息をたてる彼女を起こさないように体を横に向ける。
頬にかかったサラサラの髪を退けてやり、そのまま頬に触れた。
やめろ、俺。
起きた翠にバレたら怒られる。
…翠、肌綺麗だな。
俺の中の天使と悪魔が言い争う。
もう少し、もう少しだけ。と言い聞かせていると、彼女がうっすらと瞼を持ち上げた。
それから徐々に大きな黒目が顕になり、完全に目を開けた。
ばちんと視線がかち合って、笑顔を張りつけ慌てて取り繕う。
「ごめん、起こして」
まだ頭が回らないのか、翠は何も言わずに数秒……
「なっ、こ、ど、航太郎さん!?」
大きく瞳を見開いたかと思えば、勢いよく上体を起こして百面相している。
「昨日、俺が帰ってきた時、ソファに寝てたから、運んだ。 勝手に部屋に入られるのは嫌かな、と。 ここは俺の部屋」
「そ、わ、すみませんでしたっ、ご迷惑おかけして!!」
その慌てように、昨夜の翠が無自覚に煽るから…とは言わないでおくことにした。
「迷惑とか思ってないよ。 むしろ一緒に寝られて幸せだった」
「ぁ、朝から変なこと言わないでください…!」
変なことって。本気なんだけど。
翠と一緒のベットを使うのは新婚旅行以来だったし、確かに幸せだったのだ。
翠は恥ずかしがるから、言わないが。