お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「翠さんのことは、俺が必ず幸せにします。 咲希さんに誓って」
『…ありがとうございます。 私のわがままで、三間さんには本当になんとお礼を言ったらいいか…。 でも、その言葉を聞けて安心しました。って、自分からお願いしておいて何様のつもりって感じですね。すみません』
電話口の向こうでぺこぺこと頭を下げている姿を想像する。
素直で、思ったことは口にするところ、似ているな。
「咲希さんは、お仕事の方はどうですか。 たしか、デザイナーの仕事をすると言っていましたよね」
『ええ。 三間さんには、それしか言いませんでしたね』
咲希さんの声のトーンがわかりやすく下がる。
やはり、仕事だけが理由ではなさそうだ。
あまり触れない方がいいと話題を変えようかと考えたところで、彼女が先に口を開いた。
『実は、お付き合いしている人がいるんです。 ちょうど、お見合いの話を聞かされる三日前に、彼にプロポーズされていて……』
特に予想していたわけでもないが、まさかの方向性の話で驚く。
つまるところ、駆け落ち同然というわけではないか。
『彼は実家に行って直談判すると言ってくれたんですけど、そう簡単に両親が納得するとは思えなくて。三間さんに連絡したんです』
なるほど。
妹との縁談をまとめて、咲希さんたちは海外に行ったんだ。
それにしても、俺が女性に興味を示さないせいで痺れを切らした父親が持ってきた縁談のせいで、一組のカップルを引き裂くところだったのか。
咲希さんの人生をめちゃくちゃにしてしまわなくて良かった……妙な安堵感を覚えていると、彼女が一層申し訳なさそうに話を続ける。
『三間さんを利用して、翠を身代わりにして、やってることは本当に最低って分かってます。それでも、彼との未来を諦められなかった。 本当に、ごめんなさい』
「好きな人と一緒にいたいと思うのは、当然の感情ですよ。僕にも分かります。だから、むしろ感謝しています。翠さんと出会わせてくれたこと」
両親も、結果俺が結婚したんだから特に怒り心頭というわけでもない。
咲希さんは愛する人といられて、俺は翠というかけがえのない人に出会えて。
あとは俺が、翠を幸せにすればいい話。
「ありがとう、咲希さん」
『…翠のこと、想ってくれているんですね』
「はい。 誰にも渡しませんよ。俺が必ず幸せにします」
それから、咲希さんとしばらく電話で近況報告をし合った。
トロのことを話すと、楽しそうな声を上げて会いたいと言うので、落ち着いたら帰ってくるように言う。
「俺にも、援護射撃くらいはさせてください」
『本当にありがとうございます。 頼りにしてますね』
ご両親への説明説得が上手くいくように微力ではあるが協力したいと話せば、咲希さんはそう言って笑ってくれた。
電話を終えてリビングに戻ると、翠がキッチンに立って味噌汁をおわんについでいるところだった。
けれど俺が顔を出して声をかけても、微妙に声を出すだけでこちらを見ようとしない。
明らかに様子が変だった。
「翠? どうし…」
「はやく、運んでください」
避けるように俺の横を通り過ぎたとき、笑顔が消えた翠の表情は、氷のように冷たく、どこか寂しそうだった。
今、咲希さんに誓ったばかりなのだが……。
そう簡単にいくわけないのは分かってる。
俺は改めて、彼女を幸せに、自分のものにする手段を考えるのだった。
『…ありがとうございます。 私のわがままで、三間さんには本当になんとお礼を言ったらいいか…。 でも、その言葉を聞けて安心しました。って、自分からお願いしておいて何様のつもりって感じですね。すみません』
電話口の向こうでぺこぺこと頭を下げている姿を想像する。
素直で、思ったことは口にするところ、似ているな。
「咲希さんは、お仕事の方はどうですか。 たしか、デザイナーの仕事をすると言っていましたよね」
『ええ。 三間さんには、それしか言いませんでしたね』
咲希さんの声のトーンがわかりやすく下がる。
やはり、仕事だけが理由ではなさそうだ。
あまり触れない方がいいと話題を変えようかと考えたところで、彼女が先に口を開いた。
『実は、お付き合いしている人がいるんです。 ちょうど、お見合いの話を聞かされる三日前に、彼にプロポーズされていて……』
特に予想していたわけでもないが、まさかの方向性の話で驚く。
つまるところ、駆け落ち同然というわけではないか。
『彼は実家に行って直談判すると言ってくれたんですけど、そう簡単に両親が納得するとは思えなくて。三間さんに連絡したんです』
なるほど。
妹との縁談をまとめて、咲希さんたちは海外に行ったんだ。
それにしても、俺が女性に興味を示さないせいで痺れを切らした父親が持ってきた縁談のせいで、一組のカップルを引き裂くところだったのか。
咲希さんの人生をめちゃくちゃにしてしまわなくて良かった……妙な安堵感を覚えていると、彼女が一層申し訳なさそうに話を続ける。
『三間さんを利用して、翠を身代わりにして、やってることは本当に最低って分かってます。それでも、彼との未来を諦められなかった。 本当に、ごめんなさい』
「好きな人と一緒にいたいと思うのは、当然の感情ですよ。僕にも分かります。だから、むしろ感謝しています。翠さんと出会わせてくれたこと」
両親も、結果俺が結婚したんだから特に怒り心頭というわけでもない。
咲希さんは愛する人といられて、俺は翠というかけがえのない人に出会えて。
あとは俺が、翠を幸せにすればいい話。
「ありがとう、咲希さん」
『…翠のこと、想ってくれているんですね』
「はい。 誰にも渡しませんよ。俺が必ず幸せにします」
それから、咲希さんとしばらく電話で近況報告をし合った。
トロのことを話すと、楽しそうな声を上げて会いたいと言うので、落ち着いたら帰ってくるように言う。
「俺にも、援護射撃くらいはさせてください」
『本当にありがとうございます。 頼りにしてますね』
ご両親への説明説得が上手くいくように微力ではあるが協力したいと話せば、咲希さんはそう言って笑ってくれた。
電話を終えてリビングに戻ると、翠がキッチンに立って味噌汁をおわんについでいるところだった。
けれど俺が顔を出して声をかけても、微妙に声を出すだけでこちらを見ようとしない。
明らかに様子が変だった。
「翠? どうし…」
「はやく、運んでください」
避けるように俺の横を通り過ぎたとき、笑顔が消えた翠の表情は、氷のように冷たく、どこか寂しそうだった。
今、咲希さんに誓ったばかりなのだが……。
そう簡単にいくわけないのは分かってる。
俺は改めて、彼女を幸せに、自分のものにする手段を考えるのだった。