お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
そして今に至る。
私は航太郎さんに抱きしめられていた。
「初めからこうしていれば、お互いの寝返りとか気にならないよね」
そう言いながら、ふっと微笑んで頭を撫でてくる。
もう…!近いしシャンプーの香りするし胸板厚いし!!
これ以上、ドキドキさせないで――!!
「の、喉が渇いたので、水を飲んできます!」
何とか理由を作って彼から逃げようとするも、離してくれない。
それどころか私を抱きしめる手を強め、視線を合わせてくる。
「こ…たろうさん……! 近いです……離して――んっ…!?」
「離さない。 ほら、もう寝なよ。明日も早いよ?」
むり……眠れるわけない。
心臓の鼓動がこれでもかってくらい早くなって、体中熱い。
キスしておいて、彼はもう目を瞑って眠るつもり満々だ。
はぁ……寝顔、綺麗。
これから毎晩、こうなの……?
そりゃ、はじめてってわけではない。
一度はもっと恥ずかしいことをされて、二度目は私が寝ぼけていたからベットに運んでくれた…。
けど、それはある一定期間空いてるし、しかも一夜限りのこと。
それが毎晩ともなると、事情は変わってくる。
私は、あなたの想いが誰にあるのか、ずっと悶々としているというのに。
答えを聞くのが怖くて聞けない私は臆病でずるい。
このまま何も知らないふりをして、航太郎さんに愛されていたいと願ってしまうのだから。