お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「あら、おかえりなさい翠」
私が三間航太郎とあーだこーだ言い合っているうちに、案の定、両親はすっかりその気になっていた。
三間家とも随分仲良くなったようで!
「翠さん、よろしくね」
不意に、三間航太郎のお母様に声をかけられる。
ふんわりとした感じのいい微笑だ。
そんな、嬉しそうな顔されたら………
「こちらこそ、よろしくお願いします。 お義母様」
「母さん、翠をいびったりしないでくれよ」
「失礼なこと言うんじゃないわよ、親に向かって。 それにしても、もう名前で呼び合う関係? ふたり、相性いいんじゃない?」
この短時間で、相性なんてわかってたまりますか、お義母様。
「そういえば、途中から呼び捨てにしましたね? ……馴れ馴れしい」
最後の一言は本人にしか聞こえない声で言う。
三間航太郎はふっと微笑むと、嫌味混じりの台詞は無視してちょっと耳を疑うことを言い出した。
「さん付けもいいよね。 尻に敷かれてる感じ? 呼び方は翠の好みに合わせるよ」
何この人……ドMなの?
「…三間さんの好きにしてください」
「俺の名前は航太郎」
にやりと笑って、私の目を見つめてくる。
名前で呼べと?
仕方ない。ここには家族が揃っているのだから。不可抗力だ。
「航太郎さん。 これから、よろしくお願いします」
表向きは、夫婦になるのだ。
家族には、円満ですよーってアピールをしておく。
「こちらこそ。 仲良くしようね、翠」
目じりに皺を作って屈託なく笑う三間航太郎。 私は見つめ返して微笑んでおいた。
……航太郎さん。あなたと仲良くするつもりは、ありませんけどね。