捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜
だって、私を押し付けられた魔王領側の魔族達が、私を快く迎えるとは限らない。もしかしたら、殺されるような事態になるかもしれないのだ。その場合、頼りになるのは、私の魔法のみ。

「うん、寝よ」

将来のことについては、考えてもキリがない。それは、無用な恐怖に囚われる結果を招くぐらいだ。それは、二十九歳まで生きた千花が学んだこと。

だから、誰かに呼ばれるまで、私は魔力量回復のために、寝ることにした。







明るい日差しに、私はうっすらと目を開けた。

「ようやく起きたぁ?」

女性の声で話しかけられる。

私は、ようやく慣れてきた目でその声の主を見る。

赤く艶やかな唇が印象的な女性。髪も目も扇情的な赤。もちろんその肢体も女性として完璧に作られた姿か思うほど。着ている黒の豪奢なドレスは、出るところはハッキリ出て、引っ込むところは引っ込んでいることを強調している。

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