捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜
そして、その赤い髪から、二本のヤギのツノが生えていた。

「ま、ぞく……」

彼女から、その圧倒的な力を感じ、生死を握られているという本能的な恐怖に声がかすれる。

「大丈夫よ。いきなりとって食いやしないから。殺すなら、あなたがすやすやと寝ている間にとっくに殺しているわ」

私の様子がおかしかったのか、面白そうにクスクスと笑う。

あ、それもそうね。魔力回復のためとはいえ、寝るのは不味かったかしら。でも、まさか、魔王領に来るまで目を覚まさないなんて、思わなかったのよね……。

「図々しく、寝たままで申し訳ありません。私はユリアと申します」

ベッドに横たわったままの体を慌てて起こそうとすると、それは、赤髪の女性に肩をそっと押されて制止された。

「私は、魔王陛下直属の四天王を拝命している、アスタロトよ。よろしくねん」

そう言って、彼女はぱちんとウインクをする。

「アスタロト、様……」
< 16 / 23 >

この作品をシェア

pagetop