捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜
「やだぁ!『様』なんていらないわよ!そのまま呼んで!」
私なんかが、呼び捨てにしていいはずの身分の人じゃないはずだけれど……、上位の相手のいうことだ。素直に私は、こくん、と頷いた。
すると、それを見たアスタロトは満足そうに微笑み、続けて私の今の状況を教えてくれた。
「あなたは、魔力枯渇による酷い過労状態よ。魔力は酷使し過ぎればしすぎるほど、回復は遅くなる悪循環なのよね。だからか、魔王領の入り口について、王国側の騎士から私がその身を譲り受けて、馬車からなんとか出して、抱き抱えて魔王城まで転移してきても目を覚さなかったの」
無防備というより、私はもう、一度休んだら起きられないほどに疲労しきっていたらしい。
「だから、まずはあなたのために整えてあった離宮……、ここのことね。そのベッドでずっと休んでもらっていたのよ」
「ありがとう……ございます」