捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜

靴を脱いで、部屋に足を踏み入れようとする。ちょうどその時、膝に力が入らずぐらりと倒れ、頭を強く打ったのか、ひどい痛みを感じた。そしてそのまま視界が黒くなっていったのだ。



◆



ーーあれ。これって私の、記憶？



私は、ようやく目を覚ました。

そうだ、あの日私は会社帰りにフラフラに疲れて帰ってきて、玄関で倒れたじゃない！

「あれは、……死んだの？前世ってこと？」

そうだ。千花として生きて来た二十九歳までの記憶がある。

目覚めた私には、立花千花として生きて来た、前世の記憶が戻っていた。