捨てられ聖女は魔王城でスローライフを送る〜戻れと言われてお断りしたら、向こうから来るらしい〜

第一章 聖女は魔族領に送られる

思考はすっかり前世の千花のものに入れ替わっていた。

魔王への嫁入りと聞いて倒れた私の精神力は、千花の記憶を取り戻すことで図太く……、いや、げふんげふん、たくましくなったらしい。そこには恐れを抱かなくなった。

だって、前世はおそらく過労死、今世も過労死寸前まで奉仕させられて捨てられた。だったら、これ以上何を恐れるというのだ。

まあ、前世の記憶からしても、魔王と言ったら、ゲームのボス的存在で、倒したと思ったら第二形態とかになったりして、見た目もその大きさも凄いというイメージはある。

今世でも、教会は魔族とは邪悪なる種族と教えている。そして時々打倒魔王を掲げて勇者を召喚するのだが、魔王が倒されたという話は、ついぞ聞いたことがない。

ただ、千花の記憶が戻ると同時に、なんだか、もういいか、と達観してしまった。