運命の推し
出会い
「日向に話さないと」
美加子がリビングのソファーに座りながら、香奈子を見た。
病院から帰ってきて、とりあえず何か飲もうという話になり、コーヒーを飲んでいる。
「日向に話すの?」
香奈子が少しだけ動揺したように見えた。
「話さないわけにはいかないでしょう」
美加子の声が厳しいものに変わる。
「そうだけど……」
香奈子はそう言って、黙ってしまった。
「私から話すわ」
私はなんてことないふうに、軽く言った。
「私のことだもの。私から話したい」
本当のことを言うと。
私は日向との交流がほとんど無い。
日向が小さな頃は離れて暮らしていたし。
日向が小学生の頃、一緒に暮らしてからだって時々会話するくらいだった。
日向は、お友だちと遊びに出かけることの多い子どもだった。