運命の推し
年老いた私とは、少し距離を置いているようにも思えた。
そのことが寂しくないわけではなかったけれど。
私としても、関わり方がうまく見つけられないままだ。
コーヒーを飲んで。
私はソファーから腰を上げた。
「日向の部屋に行ってくるわ」
美加子と香奈子は心配だったのだろう、私のあとからついて来た。
コンコン。
日向の部屋のドアをノックする。
「日向?笑子ばあちゃんよ」
私はわざと明るい声を出す。
「……何?」
細い声が返事をした。
日向の声。
こんな声だったかしら。
ずいぶん長い間、彼女の声を聞いていなかったんだなと、私は今更ながら驚いた。