運命の推し
「大事な話があるの」

私はドアに向かって話す。


「笑子ばあちゃんね、日向と話したいから、ドアを開けてもいいかしら」




どうせ嫌がられるだろう。

私の生き死になんて、この子にとって「大事」なことではないかもしれない。


きっとドアは開かない。



そう思っていたら。



……カチャ。



意外にもドアが開いた。





「どうぞ」


日向が顔を見せる。


久しぶりに見る、ひ孫。


痩せていて。

長い髪の毛。

半袖のTシャツに、デニムの短パンを履いている。



16歳の、日向。



「美加子ばあちゃんも、ママも、入れば?」

日向の行動に驚いているのは、私だけではないらしい。



「いいの!?」

香奈子の声が裏返った。




「……だって、大事な話とか言うから」


日向はドアから離れ、部屋の真ん中に置いている小さな白いテーブルの前に座った。


片付いた、キレイな部屋だ。


テレビがついている。

どうやら録画した番組を観ていたらしく、画面が一時停止状態だった。


「何を観てたの?」
なんとなく聞いてみた。

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