運命の推し
「……音楽番組。この間録画したやつ」

日向はそう言って、ビデオを再生し始めた。



……あ。

しまった。


気を引こうとして、話すタイミングを逃してしまった。




「日向、笑子ばあちゃんの話を聞きなさい」
美加子が日向に言うものの、日向は無言でテレビ画面を見つめている。



テレビ画面から女の子たちの黄色い歓声が聞こえてきた。

少し驚いて、私は画面を観た。


20代くらいの男の子数人が、テレビ画面にうつっている。



「しばらく話せないね」
香奈子が呟いた。
「日向、このグループのファンだもん」



……ファン。

ふぅん、ファンねぇ……。


なんとなく冷めた気持ちになってしまった。





画面にうつる男の子たちを日向はじっと見つめている。



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