運命の推し
「歌、上手いわね」

高音がスッと伸びていて、聴いていて気持ちのいい歌声。

「母さん、分かるの?」
美加子がニヤニヤしつつ、からかってくる。


「分かるわよぅ。素敵な歌じゃない?」


本当は。

おしゃべりしていたこともあって、サビ以外のところは歌詞もあんまり聴き取れなかった。

今も歌詞の字幕はうつっているものの、今は老眼鏡をかけていないから、私には読めない。


「しかし、よく踊れるわねー」
美加子が彼らのダンスを褒める。

ダンスといえば盆踊りくらいしか踊ったことがない私にも、「シー・ファンキーズ」のダンスのすごさは分かった。




ふと。

画面にうつる、ある男の子が気になった。


先程から歌の高音部分を歌っている子。
グループの真ん中で踊っている。


何が気になるんだろう?


どこかで見たことがある気がして。

でもそんなわけないじゃない、と思い直す。

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