運命の推し
男の子は続ける。
『今、悩んでたり、寂しさを抱えている誰かに、この曲を通して少しでも寄り添えることが出来たなら……、僕たちは幸いです』
私の中にしんみりと入ってくる言葉だった。
彼の優しさと強さを感じた気がする。
……彼をもっと知りたい。
心から思った。
「日向……」
呼ばれた日向は、私を振り返る。
「『シー・ファンキーズ』のこの人、なんていう名前なの?」
「優大」
優大……。
ちゃんと覚えておこう。
優大、優大……。
「笑子ばあちゃん、優大のことが気になるの?」
日向の質問に素早く答えたのは私ではなく、美加子だった。
「何言ってんのよ〜、まっさか!」
ケタケタ笑っている。
「『まさか』じゃないわよぅ」
私はコホンとひとつ、咳払いをした。