運命の推し
我が子から「高齢者」と言われることに、ものすごく腹が立つ。
「心外だわ」
腹が立って。
そして、寂しい。
何だか、切り離されていくみたい。
美加子の中に、私はずっと「母さん」として在り続けたいのに。
「ふたりとも、よくこんなに暑いのに熱いお茶なんか飲めるねー!?」
リビングに入ってきた香奈子が、不思議そうな声を出した。
お風呂上がりの香奈子。
台所へ移動し、冷蔵庫から麦茶を出してコップに注いだ。
「笑子ばあちゃんも、お母さんも、やっぱり歳ね!冷たいもの、全然飲まなくなってるじゃない?」
香奈子の言葉に、美加子の表情が変わる。
「あんたも年寄り扱いされてるのね」
私はトドメを刺した。
美加子は俯く。
それから、何となく可笑しくなってきてふたりで笑ってしまった。
香奈子は麦茶を飲みつつ、
「何が可笑しいんだろ?」
と呟いていた。