運命の推し


「笑子ばあちゃんと日向の気が合うなんて、私も嬉しいよ」


その言葉に美加子は、
「ふんっ」
と鼻を鳴らした。









自分の部屋に帰ると、仏壇に手を合わせた。


「お父さん」

そっと話しかけてみる。



「日向のことを、見守っていてね」


そう言ったそばから、
「美加子のことも、香奈子のこともお願いしますよ」
と付け足してしまう。




部屋の電気を消して、敷いておいた布団に入る。




香奈子は、もう結婚しないのかしら。


ふと頭の中に疑問が浮かぶ。




あの子はシングルマザーだ。

そして、未婚の母。

日向を身籠った時、私も美加子も大反対した。


『ひとりで産んで育てていくなんて、香奈子には無理よ』

そう言った美加子に、私も同意した。


『人を育てることの大変さが、分からない歳でもないでしょう!?』



美加子がそう言ったのは、自分自身もシングルマザーだからだと私は思う。


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